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AIをうまく使える人とそうでない人の差は、プロンプトの上手さだと思われがちです。
私はしばらくそう思っていて、うまい書き方を探して回っていました。それでも、返ってくるものはどこか他人事のような文章のままでした。
変わったきっかけは、書き方ではありませんでした。AIを何だと思うかを変えたことです。
道具だと思うのをやめて、優秀だけど文脈を何も知らない秘書だと思うようにしました。それだけで、頼み方も、うまくいかなかったときの受け止め方も変わりました。
道具だと思っていると、こうなる
道具は、自分が操作するものです。うまく動かないのは操作が下手だからで、正しい操作を覚えれば正しく動く。
この前提でAIに向かうと、こういう状態になります。
- 一発で完成品が返ってくる指示を探そうとする
- うまい書き方が載っているプロンプト集を探し回る
- 思ったものが出ないと、自分の書き方が悪いか、AIが使えないかのどちらかだと結論する
私はこの状態に半年くらいいました。毎回ゼロから完璧な指示を組み立てようとするので、単純に疲れます。そして疲れるものは続きません。
道具のたとえが悪いのは、往復を想定していないことだと思います。ドライバーに向かって「もう少し強く」とは言いません。でもAIには言えます。
「文脈を知らない秘書」だと思ってみる
いま私が持っているイメージは、こうです。
能力はとても高い。文章も速いし、抜け漏れも少ない。ただし、こちらの会社のことも、今回の案件のことも、自分の立場も、何ひとつ知らない。
つまり、今日入ってきたばかりの優秀な同僚です。
この人に仕事を頼むとき、いきなり「資料を作って」とは言わないはずです。何のための資料で、誰が読んで、何を判断してもらいたいのかを先に話します。そして、一度で完璧なものが出てくるとも思っていません。
AIに対してだけ、なぜかそれをやっていなかった、というのが私の反省でした。
発想が変わると、やることが3つ変わる
秘書だと思うようになってから、実際にやっていることが変わりました。
1. 背景を先に渡すようになった
道具には背景を渡しません。人には渡します。
いまは、頼む前に前提を一段落だけ書きます。誰が読むのか、何を決めてほしいのか、どんな制約があるのか。この一段落があるかないかで、返ってくるものの解像度がはっきり変わります。
具体的に何を渡すかは、新人に頼むつもりで渡す3つにまとめています。
2. 雑に頼めるようになった
意外かもしれませんが、秘書だと思ってからのほうが指示は雑になりました。
完璧な指示を組み立てる必要がなくなったからです。背景さえ渡してあれば、あとは「これ、いい感じにまとめて」で十分なことが多い。ずれていたら次で直せばいい、と思えるようになりました。
結果として、使う回数が増えました。丁寧に使おうとしていた頃より、雑に何度も使う今のほうが成果は出ています。
3. 返ってきたものに、指示を足すようになった
一発で完成させるのをやめました。
返ってきたものを読んで、「ここはもっと短く」「この部分は具体例がほしい」と足していく。人に頼むときと同じです。
往復を前提にすると、最初の出力が微妙でも折れません。むしろ、最初の出力は「相手が何を理解したか」を確認するための材料になります。
失敗の意味が変わる
道具だと思っていた頃は、出力が悪いと「使えない」で終わっていました。
秘書だと思うようになってからは、出力が悪いのは「渡した情報が足りなかった」というサインとして読めるようになりました。
これは人に仕事を頼むときと同じ構造です。上がってきたものがずれていたら、指示の出し方を疑う。相手の能力の問題にしない。
そう考えると、AIとのやりとりは、仕事の頼み方の練習でもあります。私はこれが、AIを使っていて一番思わぬ収穫だったと思っています。
任せない範囲は、先に決めておく
ひとつだけ、秘書のたとえで気をつけていることがあります。
任せないことを先に決めておく、という点です。
私が任せないのは、事実の最終確認と、判断そのものです。数字や制度の話は必ず自分で一次情報に当たりますし、どれを選ぶかは自分で決めます。
秘書に決裁を任せる人はいません。同じことだと思っています。
この線引きは領域ごとに違うので、たとえば職務経歴書のように自分の実績を扱うものは、どこまでAIに任せるかを決めてから使うようにしています。
まとめ
- AIを道具だと思うと、一発勝負になって疲れる
- 文脈を知らない優秀な秘書だと思うと、背景を渡し、雑に頼み、往復できる
- 出力が悪いのは能力ではなく、渡した情報が足りないサイン
- 任せない範囲(事実確認と判断)は先に決めておく
うまい書き方を覚えるより、相手を何だと思うかを変えるほうが、たぶん先です。

